2018年09月28日

『図書館ドラゴンは火を吹かない』

東雲佑 先生の感動ファンタジー作品が、新規エピソードを加えて文庫化。物語師として
成長していく少年が出会った唯一無二の存在となる火竜との旅の行く末を描いていきます。
(イラスト:輝竜司 先生)

http://tkj.jp/book/?cd=TD287465


骨の魔法使いに育てられた“ユカ”の天真爛漫な振る舞い。彼と出会い、匿名の竜から
“リエッキ”として生きる彼女の波乱万丈な生き様。文庫化されたことで、より手軽に
2人の物語に触れられる喜びはまたひとしお。400ページに迫る改稿で密度も高めです。

“牛頭”から託された“カルメ”とのやり取りに“リエッキ”の救いが見出せるか注目
しながら読み進める第四章が今回最大のポイント。あの時の呪使い“左利き”、そして
“相棒”が“ユカ”たちを追跡する中で、敵ながら理解者でもある所を示すのが小憎い。

“左利き”が“ユカ”を庇うことになるあの場面、輝竜 先生の挿絵も絶妙な演出です。
あの森、あの祭の日を区切りの舞台として選んだ“ユカ”の決意、受ける“左利き”の
想いはどうぶつかるのか。ぜひ続刊をもって描いていってほしい。切にそう願います。


◆【MV】Liekki / 初音ミク
https://youtu.be/IE3Ws5gpooY

◆ Liekki 歌ってみた【そらる】
http://nico.ms/sm33896993

◆『図書館ドラゴンは火を吹かない』文庫発売記念生配信
https://youtu.be/Fw4JxmQ-KJ0

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2018年09月27日

『「私が笑ったら、死にますから」と、水品さんは言ったんだ。』

隙名こと 先生の「第7回ポプラ社小説新人賞・特別賞」受賞作。15分で1万円、という
怪しげなバイトを勧めてきた笑わない美少女と関わる少年を軸に描く青春ミステリです。
(イラスト:爽々 先生)

https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8111259.html


クラスメイトからレアメタルなどと揶揄される“水品”からの依頼を承諾した“駒田”。
人体実験? 詐欺行為? 訝しむ彼は電車の中で雑誌を読むことを彼女から指示される。
男性から痴漢行為を受けるかも、と嘯く彼女の言葉に怯える彼はあることに気づく──。

偶然と不運で父を亡くした“駒田”。ネットワークが普及する昨今、その死を弄ぶ悪意
に晒された経験を持つ彼の機微、描写に思わず共に憤りを感じてしまいます。バイトを
通じてもたらそうとする小さな奇跡、その下敷きとなる意図が胸に重くのしかかります。

「私が笑ったら、死にますから」と言い切る“水品”が抱える心の傷とその原因。SNSに
長く触れてきた身として考えさせられる展開です。その傷と向き合い続けた彼女が出す
結論、それを受け止める“駒田”の葛藤。2人の顛末をぜひ見届けてほしいと思います。

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2018年09月26日

『GENESISシリーズ 境界線上のホライゾンXI<中>』

川上稔 先生が贈る戦国学園ファンタジー。11話中巻はヴェストファーレン会議に場を移し
三河争乱から今まで武蔵勢が何を受け止め、考え、行動してきたか。その全てを示します。
(イラスト:さとやす 先生(TENKY))

https://dengekibunko.jp/product/horizon/321804000339.html


舌戦に次ぐ舌戦。バトルなしでも十分熱い。会議に構える武蔵勢の穏やかな雰囲気が嵐の
前の静けさだったと今にして思います。ミュンスター講和条約の場では“ウィレム二世”
に対峙するあの代理交渉人が、情報とハッタリを武器に彼をやり込める展開にまず驚嘆。

オスナブリュック講和条約の場では敵と見ていた瑞典が色々な意味で鍵となる流れには
手に汗握る緊張感で魅せられましたし、ミュンスター講和会議の場では奮戦する“三成”
に無理難題を押し付ける“マティアス”を「彼女」が叩き潰してくれて気分爽快でした。

迎えるヴェストファーレン三河会議の場では“正純”と“教皇総長”の平行線な議論が
外界開拓、創世計画、大罪武装などありとあらゆる論点を昇華させあの結論へ辿り着く
過程には胸を熱くせずにはいられません。第二の月に向かう彼らの命運を見届けます。

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2018年09月25日

『七つの魔剣が支配する』

『ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン』の 宇野朴人 先生が贈る新作は魔法使いが剣を
帯びる世界で、それぞれの想いを胸に魔境のような魔法学校へ臨む新入生たちを描きます。
(イラスト:ミユキルリア 先生)

https://dengekibunko.jp/product/7-maken/321804000334.html


入学式で行われる魔法生物のパレード。それを見て彼らの人権について語る“カティ”に
突如列から離れたトロールへと足を運ばせる魔法が掛けられる。助けに入る“オリバー”
の目に飛び込んできたのは刀を振るうサムライの少女。魔法には縁が無さそうだが──。

学校長からの容赦ない言葉が示す通り、心技体揃った研鑽が必要なだけでなく上級生らの
言動や人権派などの派閥に翻弄されるなど、まさに混沌とした魔法学校でどう生き抜くか。
“カティ”が巻き込まれた事件を探る“オリバー”らを軸に進む話がページ数的にも重厚。

襲われたトロールを気に掛ける“カティ”の言動が意外な結末を呼び込む中で魅せたあの
“ナナオ”の強さ。彼女の気高さも相まってより惹かれるものが。それだけでは済まない
エピローグで見せたあの一面がまた重そうなテーマで、どう話を動かしていくか注目です。

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2018年09月24日

『はたらく魔王さま!19』

和ヶ原聡司 先生が贈る魔王と勇者の庶民派ファンタジー。第19巻はマグロナルドを離れ
受験勉強に専念するはずの“千穂”がエンテ・イスラの政情変化に巻き込まれていきます。
(イラスト:029 先生)

https://dengekibunko.jp/product/maousama/321805000012.html


制服も返して、いざ! という時に“鈴乃”に提示された辞令。“エメラダ”らの努力を
ふいにする情勢の動きを境に次々と“千穂”が仲介役を担わされるという不憫さには同情
せざるを得ません。ここに“アシエス”の異変が重なるというのだから泣きっ面に蜂で。

思わぬ重責を背負うことになり、見たくもなかった教会の真実を改めて目にした“鈴乃”。
懊悩する彼女の気持ちを救ったのが“真奥”なのは言うまでもないですが、性急に事が
動いた、という印象でした。挿絵から滲ませる表情がまた幸せそうで悩ましい展開です。

いつも通りの仕事しかしていない“真奥”を他所に“千穂”が新たな決意をもってあの
マグロナルド幡ヶ谷駅前店から動き始めていくその姿が凛々しい。それにしても今回は
色々な場面で連絡不備が続いて混迷しましたが、次巻以降でスッキリするか見ものです。

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2018年09月21日

『火焔の凶器 ─天久鷹央の事件カルテ─』

知念実希人 先生が贈る新感覚メディカル・ミステリー。長編シリーズ4冊目は陰陽師の
墓をあばいた研究者が次々と不審な死を遂げる呪いのような謎を“鷹央”が診断します。
(イラスト/いとうのいぢ 先生)

http://shinchobunko-nex.jp/books/180133.html


“室田”教授の話によると、陰陽師の歴史を紐解く上で重要とされる人物“蘆屋炎蔵”の
子孫を発見し、その墓に入った彼自身が体調を崩し残る2人も焼死したり、錯乱したりと
まるで呪いの仕業のよう。“炎蔵”に呪われたものは皆、焼死しているというのだが──。

“室田”と“碇”の容態が悪化した理由が“炎蔵”の墓にあるのは想像の範疇ではある
ものの、その後に起こる怪事件の数々、“内村”が焼死した理由がトンと見えてこない。
本当に最後の最後まで事件の真相、そして真犯人が分からなかったのはやきもきしました。

“小鳥遊”が研究メンバーの紅一点である“葵”との関係も上手く進められないあたりは
“鴻ノ池”の監視が厳しいだけではないような気もします。そんな彼が今回かなり窮地に
陥る破目になるので、それをどう回避するのか、といった点にも注目いただきたい所です。

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2018年09月20日

『聞こえない君の歌声を、僕だけが知っている。』

松山剛 が贈る新作は、動画投稿サイトに上げられた「歌声だけがない歌う少女」の動画を
見たある青年が突然、彼女の声を聴けるようになることから始まる、切ない愛の物語です。
(イラスト/さけハラス 先生)

http://mwbunko.com/978-4-04-912117-9/


“永瀬”が悪友から勧められた「無声少女」の動画にすっかり嵌まってしまったある日、
なぜか自分だけ動画から歌声が聴こえた。幻聴かと疑いつつも歌詞を書き出してみると
ある場所に近い情景が含まれていることに気付く。彼は「無声少女」に逢えるのか──。

講義もすっ飛ばして“永瀬”が辿り着いた場所にいたのは“サクヤ”という女の子。でも
話がちぐはぐで彼女は「無声少女」ではないらしい、という所からあれよあれよと2人の
未来に、更には人生観に迫っていく設定と展開が絶妙で結末からは切なさと愛が溢れます。

ロストナンバーで上げられた曲のタイトルが物語における色々な要素を含んでいたのだと
読み返してみて分かります。“永瀬”が、“サクヤ”が、そして「無声少女」がそれぞれ
想うこと、願うことの顛末をどうか見届けてあげてほしい。そう思えるお薦めの一作です。

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2018年09月19日

『キミの忘れかたを教えて』

あまさきみりと 先生が贈る新作は大人の青春物語。シンガーソングライターとして夢を
叶えた女と彼女に劣等感を抱いて自暴自棄になった男が再会することで話が動き出します。
(イラスト:フライ 先生)

https://sneakerbunko.jp/product/kimiwasu/321803000510.html


余命半年。大学も中退し、近所からは後ろ指を指されながらニートな日々を過ごす“修”。
ある日、悪友の“正清”に連れまわされて辿り着いた母校の中学校で、「彼女」のために
書いた歌を唄う声が聴こえる。あの日互いの道を分けたはずの“鞘音”の姿がそこに──。

今や現役大学生シンガーソングライターとして有名となった“鞘音”が5年前。唄う夢に
一緒になって付いてきてほしかった“正清”が気づけなかった「あの7秒」がもどかしい。
動かなくなった指をもう一度、動かせるようにしてまでやったことがムダに思えるくらい。

迫りくる命の期日。幼馴染としての“鞘音”と歌手としての“SAYANE”。“修”と一緒に
バカをやってくれる人たち。彼が引き止めたかったのはどっちの彼女なのか。すれ違う
感情の果てに2人は互いの道を、想いを寄せられるのか。ぜひ結末を確かめてみて下さい。

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2018年09月18日

『二十世紀電氣目録』

すでにアニメ化が進んでいる、結城弘 先生の第8回京都アニメーション大賞奨励賞受賞作。
明治時代に出会った、神仏を妄信する少女と電気が人々を救うと豪語する少年の恋物語です。
(イラスト:池田和美 先生 美術・背景:長谷百香 先生)

http://www.kyotoanimation.co.jp/books/lineup/?cd=978-4-907064-88-4
http://www.kyotoanimation.co.jp/books/20thdenmoku/


酒造りの家に生まれた“稲子”は信心深く、鈍くさいことで知られる少女。傾いた経営の
カタに酒問屋の“洋輔”に嫁入りが決まると意気消沈する。そんな彼女に偶然知り合った
“喜八”が救出に乗り出すが、彼が幼少の折に書いた「電氣目録」が欲しいと言われ──。

「二十世紀は電気の世紀」兄“清六”と共に行った博覧会で電気に魅了された“喜八”が
落書きのように書いた「電氣目録」が欲しい理由は何か。1冊の本を巡って描かれる壮大
かつ浪漫にあふれた冒険譚と恋愛模様にまず惹き込まれます。彼を応援したくなります。

“喜八”と“稲子”が結婚話をご破算にしようと四苦八苦する中で出会う人物たちが描く
思いがけない相関図が、2人が実は逢うべくして逢っていたのかもしれない、と思わせる
ほどに秀逸に出来ていて驚きました。信じる心が結ぶ話も清々しくて、実に良かったです。

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2018年09月17日

『魔法使い黎明期 劣等生と杖の魔女』

『ゼロから始める魔法の書』の 虎走かける 先生が、その世界観を受け継いだ新作を発表。
ウェニアス王国王立魔法学校の落ちこぼれに課せられた特別実習を巡る騒動を描きます。
(イラスト:いわさきたかし 先生 一部キャラクター原案:しずまよしのり 先生)

http://lanove.kodansha.co.jp/books/2018/9/#bk9784065132951


「魔女がいる村で、どんな形でもいいから魔法使いとしての実績をあげてほしい」学長の
“アルバス”からそう告げられた“セービル”は魔法学校で過去最低という成績の持ち主。
秀才の“ホルト”、獣堕ちの“クドー”、引率に魔女の“ロス”が加わり賑やかだが──

「ゼロの書」の閲覧が目的の“ロス”が実に自由闊達で、まず面白い。そこへ魔法使いに
なりたい理由が様々の特別実習生らが村までの旅を謳歌・・・できなくなる事件に見舞われる
所から話は少しずつきな臭くなってきます。この胡散臭い展開に期待が高まるというもの。

辿り着いた村で出会う“傭兵”や“神父”そして“ゼロ”のらしからぬ言動が生徒たちを
翻弄していく中で知らされる「特別実習」の真の意味。これは“アルバス”、えげつない。
種明かしの一幕にほっと安心した所で“セービル”たちがどんな成果を出すか楽しみです。

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2018年09月14日

『僕は君に爆弾を仕掛けたい。』

高木敦史 先生が贈る新作は学園謎解きラブコメディ。とある理由により仕掛けた爆弾を
見つけられた少年が、それを見つけた少女の言動に次々振り回されていく様子を描きます。
(イラスト:遠坂あさぎ 先生)

https://sneakerbunko.jp/product/bokuhakiminibakudan/321805000440.html


テストで常に一位を取りながら保健室登校を続ける“小手毬”は七不思議に挙げられる
ほど謎多き存在。ある日、“胤森”先生を悪意から護るために爆弾を準備した“笹子”は
彼女にそれを撤去されてしまう。探りを入れてみると思わぬ舌戦を繰り広げる破目に──。

「犯人」を引きずり出せるか。“笹子”に対して勝負を挑む“小手毬”を軽くあしらう
つもりがとんでもない事実を突きつけられて完敗してしまう彼の油断。それが彼と彼女が
学園内の謎に首を突っ込む契機になるのが面白い。2人のこじらせ具合も相当なもので。

気難しい“小手毬”が抱く、学園の良くも悪くも「平和主義」な一面へのくずぶった憤り。
それがお気に入りとした“笹子”からの手痛いしっぺ返しで晒される、何ともはた迷惑な
痴話喧嘩をぜひ見届けてあげてほしい。そして2人の行く末を見守ってほしいものです。

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2018年09月13日

『察知されない最強職2』

三上康明 先生が贈るファンタジー作品。第2巻はダンジョンからあふれ出たモンスターに
巻き込まれた村を見捨てようとする者、助けようとする者、各々の思惑と葛藤を描きます。
(イラスト:八城惺架 先生)

https://herobunko.com/books/hero59/8647/
https://ncode.syosetu.com/n5475dz/


“ラヴィア”の魔法がどれほどのものか調べつつ、彼女を助けた際の「アリバイ工作」が
有効に機能しているか探りを入れたり、入れられたりする“ヒカル”駆け引きが面白い。
今回の件に首を突っ込む“ポーラ”を気にかける彼にヤキモチを焼く彼女がまた可愛い。

皇国との戦争を優先するあまりギルドも高ランクの冒険者たちを村の対応に割けない中、
“ポーラ”たちが死地とも言える現場へ駆けつける様子を見て“ヒカル”が事態打開を
狙って単独でのダンジョンアタックに臨むあたりはいかにも彼らしくて思わず苦笑い。

黒と白の竜に“ヒカル”や“ラヴィア”が苦戦を強いられる中、“ポーラ”がある重要な
選択肢を迫られるのが今巻一番のポイント。ダンジョンの最奥で示されたアレももちろん
話の軸を握る鍵ではあります。“ポーラ”の選んだ道に過ちがなかったことに一安心です。

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2018年09月12日

『精霊幻想記 11.始まりの奏鳴曲』

コミカライズに続きドラマCD化が決定した、北山結莉 先生が贈る異世界転生譚。第11巻は
“貴久”と“亜紀”が起こした騒動を前に“雅人”たちがどう決断を下すのか、注目です。
(イラスト/Riv 先生)

http://hobbyjapan.co.jp/hjbunko/lineup/detail/800.html
https://hobbyjapan.co.jp/comic/series/seireigensouki/
https://ncode.syosetu.com/n1094bz/


事の顛末を知った“雅人”を前にあくまで理性的な対応をとる“リオ”、そして“美春”。
先々を見据えて頑張っていただけに、“雅人”にとって苦渋の決断だったのは少々切ない。
反省の色が薄い“貴久”に“沙月”が言いきってくれたのは救いのようで、空しくもあり。

今回の件で思い悩む“リリアーナ”や、爆弾発言を投げかける“シャルロット”。様々な
想いを置いて“リオ”が向かうのは“セリア”の実家。そこは“アルボー”公爵のむき出し
となった野心に身の危険を覚えた者たちの姿があったのだから驚きです。父の言動もですが。

思いがけず逃避行に手を貸すことになった“リオ”も、尾行を続けてきたアレの悪意などに
晒されて一筋縄ではいかない展開に力が籠ります。“瑠衣”の言動も見る限り「勇者」の
存在が少しずつこの世界を歪めていくのではないか、そんな予感を抱きつつ次巻を待ちます。

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2018年09月11日

『理想の娘なら世界最強でも可愛がってくれますか?』

三河ごーすと 先生が贈る新作は終末学園ファンタジー。謎の寄生生物により地上を追われ
地下で再起を図る人類の希望となるやも知れぬ少女とその冴えない父親の日々を描きます。
(イラスト:茨乃 先生)

https://mfbunkoj.jp/product/risounomusume/321804000082.html


人類唯一の地下生存圏「人類再生機構」。その要因となった胞子獣を駆逐する魔法騎士を
育む魔法騎士学園に首席入学した“雪菜”はSランクの持ち主であり、父親の“冬真”に
べったりでもあることから色々と注目を集める少女。学園生活に不安が否めないが──。

“冬真”に思う所ある“カチュア”。彼女の娘で“雪菜”をライバル視する“セリカ”。
そこに父娘に助けられた“アレイナ”や何やらいわくありげな“黒子”が加わって親離れ
できない娘の成長を追う、子離れできない親の姿を穏やかに見守れると思ったら大間違い。

突如現れたカルト集団、そしてSランク一人でも太刀打ちできない胞子獣の出現に困惑する
“雪菜”の哀しみと怒りの頂点から告げられたお願いが「終末世界」であることを嫌でも
再認識させてくれます。引きも穏やかではない雰囲気に包まれていて続きが気になります。

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2018年09月10日

『彼女のL 〜嘘つきたちの攻防戦〜』

三田千恵 先生が贈る新作は、嘘が分かる特異体質の少年と、彼が気に掛ける嘘をつかない
少女、そして嘘ばかりつく学校のアイドルが織り成す奇妙なトライアングルストーリーです。
(イラスト:しぐれうい 先生)

https://ebten.jp/eb-store/p/9784047352308


人の嘘が分かる、それ故に父との人間関係すらぎくしゃくしている“正樹”。彼は級友の
“川端”の話から、彼女の親友である“小林”を殺した犯人として心当たりのある“佐倉”
に探りを入れることに。思わせぶりな彼女からは「絶対言わない」と強く言われるが──。

嘘をつくのが嫌いな“正樹”。嘘をつきたくない“川端”。いつも嘘ばかりつく“佐倉”。
その信条に至った背景がしっかりしているだけに“佐倉”がさも悪者のように映りますが
「“川端”が“小林”を殺した」という噂が出回ることで状況は大きく揺らいでいきます。

やがて“小林”が抱えていた嘘に辿り着くことで、“正樹”も“川端”も嘘との向き合う
姿勢に変化が現れ、成長を垣間見ることができる描写の数々と話の結び方はお見事と言う
しかなく。しぐれうい 先生の表紙のインパクトや挿絵の演出も上々でお薦めの一作です。

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2018年09月07日

『じゃがトマ警察の生理学』

頒布早々に完売という伝説を残した『作家軽飯』に続きカルロ・ゼンさん、蝉川夏哉さん、
津田彷徨さんが贈る「コミックマーケット94」の新刊は世にある助言者たちに言及します。
(イラスト:赤嶺明美 さん)

http://www.tasty-3.com/posts/4689615?categoryIds=1019327


作品への指導という名の愛なき批判に対して創作者たちはどう向き合うべきか。筆を折る
ことのないように「じゃがトマ警察」を分析し、対策を提示し、その先の可能性に触れる。
各々の文体とそれを活かすデザインで構成される内容は創作者のためになることうけあい。

また、創作物を消費者としてどう受け止めるべきか。襟を正したくなる思いに駆られます。
指南書のようなカルロ・ゼンさんの「殺し方」、じゃがトマ警察という存在に触れていく
蝉川夏哉さんの「症例報告」、論文調な津田彷徨さんの「治療戦略」、どれも興味深い。

奇しくも書きたい内容が被った本作、次回はぜひ蓄積された「作家軽飯」リストに基づく
新たな隠れ家に言及する話が読みたいところです。暁なつめさん提供のフリーペーパーは
迫りくる〆切を前にした心境と、合間に食べるメニューの「我関せず」感が絶妙でした。

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2018年09月06日

『ヒトよ、最弱なる牙を以て世界を灯す剣となれ グラファリア叙事詩』

上総朋大 先生が贈る新作は戦記ファンタジー。人間より他種族が優位となった世界で奴隷
としてヴァンパイアの下で過ごす少年が、人が人として生きるための国作りを目指します。
(イラスト:細居美恵子 先生)

http://www.fujimishobo.co.jp/bk_detail.php?pcd=321803001764


エーテルを操る能力を持つ人間の希少種である“ジノ”は、今やヴァンパイアに血を提供
するだけの存在。野心を抱く彼は、かの国の跡継ぎ問題で後れを取る“ヘネシー”に目を
つける。市井で酒に明け暮れると噂の彼女、彼と同じく只者ではない人物と見抜くが──。

“ヘネシー”をいわゆるパトロンとして貪欲に知識を吸収した“ジノ”が、彼女の領地を
次々と改革していく手腕や“ヴィオラ”や“ライバー”たちを手玉に取るやり口が見事。
その努力の影に、彼が野望を共に抱いた仲間との悲しい過去に苛まれる様子が痛々しい。

活躍に目をつけられた“ジノ”が対面した“ヘネシー”の父であり大公の威風とは真逆に
金の亡者たる兄の“ワーテイス”が次代を担うのかと思うと辟易する中、父の後継争いに
巻き込まれる“ジノ”たちがどう窮地を乗り越えるかが見所で、続きが楽しみな物語です。

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2018年09月05日

『お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。』

凪木エコ 先生が贈る新作は青春ラブコメ。一人で過ごす時間を何より楽しむ男子高校生が
思いがけず校内の美少女たちにおひとり様ライフを脅かされることになる顛末を描きます。
(イラスト:あゆま紗由 先生)

http://www.fujimishobo.co.jp/bk_detail.php?pcd=321803001768


独りが好き。そう思って憚らない“春一”は落ち着ける静かな場所を求めて校内を彷徨う。
とある筋から教えられた空き教室を見つけた彼は担任に咎められ、交換条件を提示される。
クラスの親睦会で幹事をする彼に追随してきたのがなぜか校内のアイドル“華梨”で──。

「独りってそんなにダメなことなんですか?」と嘯く筋の通った“春一”の言動が印象的。
「できない」のではなく「しない」というのがまたズルい。うらやまけしからんヤツです。
幹事をするのは友だち作りのためだ、と勘違いした“華梨”の振り回されっぷりが面白い。

“春一”にべったりな妹の“ゆず”や、何かと嗜好が合う“英玲奈”にも付き合わされて
独りの時間を奪われていく彼が、親睦会の幹事を務めることで変わる所、変わらない所を
見届けてみるのも一興かと思います。“華梨”の頑張りぶりもぜひ応援してあげて下さい。

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2018年09月04日

『ジャナ研の憂鬱な事件簿4』

酒井田寛太郎 先生が贈る日常系ミステリー。第4巻は“啓介”が事件と関わる姿を通じて
真実とどう向き合うのかを問いかける“真冬”が、その答えに対し彼の本質を見抜きます。
(イラスト:白身魚 先生)

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094517484


「金魚はどこだ?」では写真部がコンクールで金賞をとった被写体である金魚とその鉢が
無くなる事件に臨む“啓介”。部員の“玲”が置かれている境遇などを踏まえ真相に迫る
過程において、自身が「推理する」ということに対する葛藤に似た感情を抱くのが印象的。

「スウィート・マイ・ホーム」では“ユリ”の母が勤める介護施設で起こる騒動を巡って
“啓介”の推理は身を助ける「芸」になると評価する“真冬”と意見が決定的に分かれる
重要な話。白身魚 先生の挿絵が両者の意志を見事に演出しています。自惚れでしたなぁ。

「ジュリエットの亡霊」では幽霊を見たという“玲”の話を受け事の真相を探る“啓介”。
“真冬”が寄り付かなくなったジャナ研の雰囲気と意外な結末がもたらす一抹の寂しさは
気が気でない。加えてあの間の悪さ。“啓介”は己と向き合う暇があるのか気になります。

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2018年09月03日

『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦5』

細音啓 先生が贈る王道ファンタジー。第5巻は“シスベル”を皇庁へ護衛することとなる
“イスカ”たちが彼女に向けられた悪意の数々、その周囲で暗躍する者たちと対峙します。
(イラスト:猫鍋蒼 先生)

http://www.fujimishobo.co.jp/bk_detail.php?pcd=321804000870


“シスベル”から“イスカ”へのあからさまなアプローチに対し“ミスミス”や“音々”
そして“アリス”が黙っているワケがない。特に彼のことを「奪われるかも」と認識した
“アリス”の大爆発ぶりが今後を左右するかもしれない様子で思わずニヨニヨするところ。

皇庁では王女暗殺未遂事件が発生して“仮面卿”に嫌疑が掛かる事態に。その犯人を捜す
鍵を握るのが“シスベル”ということで、彼女の身を脅かす勢力がついに動き出す不穏な
空気は気になる展開。彼女もああいった形で襲撃されることになるとは思わないでしょう。

“イスカ”が“シスベル”を襲う新たな敵の存在に苦戦した、その理由から窺える得体の
知れない何か。それに輪をかけるかのように意味深長な感情を吐露する“イリーティア”
の真意と合わせて読めない部分に注目しつつ、次巻の三つ巴な戦争が楽しみでなりません。

posted by 秋野ソラ at 00:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | ライトノベル